小説の冒頭について1
今回の記事は、自分の執筆のためのメモとして残しておこうと思います。
いまさらですが、小説にとって冒頭の部分はとても重要です。
なぜなら、冒頭で読者を引き込まないと、最後まで読んでくれないおそれがあるからです。
脚本術の本を執筆したシド・フィールドは、こう言っていました。
「たくさんの脚本を読みこなさなければならなくなった時、
脚本全部を読むのをやめて、30ページだけ読むことにした。
30ページでストーリーが構築できていない脚本は、見込みがない」
もちろん、冒頭の入り方が小説自体を左右するという側面もあります。
「小説の秘密をめぐる十二章」では、谷崎潤一郎の「細雪」の冒頭部分を引用して、
この長編小説の導入として小説内の世界を提示するのに成功しているだけでなく、
登場人物の人間関係や属性、それに性格まで用意周到に描いている、と絶賛しています。
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また、「小説の秘密をめぐる十二章」で河野多惠子は、
小説の導入部は登山におけるロックハーケンの最初の打ち込みのようなものである、
とたとえています。
登山で最初のロックハーケンを打ち間違えると、そのあとのルートが厳しくなってしまい、
非常に苦労するのだそうです。
同じように小説でも導入を間違えると、ムダな描写をしなければならなくなって、
なかなかスムーズに流れに乗ることができなくなってしまうとのことです。
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小説の導入はいくつかのパターンに分類できます。
もちろん分類しにくいものもありますが…。
ライトノベルに限らず、エンターテイメント小説でよくある導入のパターンは、
アクションから始まる、というものです。
例えば、この「這いよれ!ニャル子さん」。
主人公が走っているアクションから始まります。
(なか見!検索で冒頭部分が読めます)
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こういうタイプの出だしだと、
最初からアクションに沿って小説が動くので、流れが作りやすいです。
でも、読者はその時点で登場人物の性格も、世界観もわかっていません。
その読者に対して、さきほどの「細雪」のように登場人物の造形をしながら
アクションの描写をテンポよく進めていくのは、けっこう難易度が高いのではないかと思います。
ちなみに、「書きあぐねている人のための小説入門」では、
アクションから始まる導入を「フィクション度100の世界に読者を連れて行く」やり方と呼んでいます。
現代小説としてはそのやり方は無防備すぎるので、フィクション度10くらいから始めるのが自分は好きだ、
と著者は述べています。
「書きあぐねている人のための小説入門」の著者・保坂和志のデビュー作も
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ほかのパターンについては、またのちほど考えを書く予定です。