東京都青少年条例改正の一番の問題は、業界の自主規制を無視して販売規制をかけること。実質的に検閲だ


東京都の青少年条例改正によるマンガ・アニメ規制の問題は、
石原都知事の放言に注目が集まったりして途中で様々な問題が浮かび上がってきましたが、
一番の問題はここにあると思います。


●業界の自主規制を無視して販売規制をかけること。


これに尽きます。
表現の自由」対「子供への悪影響」という対立軸ではないのです。
出版業界は、100%の表現の自由を主張して「何でも規制するな」という立場ではありません。
率先して自主規制に取り組み、書店・コンビニで成人棚を設け、「成年コミック」のシール貼り
等も行なってポルノグラフィックな書籍を未成年の手に渡る可能性を限りなく少なくしてきました。


それに対して、東京都は今回の条例改正にあたって、
その出版業界の自主規制の現状を「まだ足りない」と言って無視し、
業界と自主規制のあり方について話し合うことも行なっていません。
これは、出版十社が東京国際アニメフェアへの出展を拒否したことでも明らかです。


3月に提出して反発をくらった改正案をいじったものを11月下旬に提出し、
12月15日には採決に持っていこうとしています。
これはあまりにも拙速です。
それなのに東京都は東京国際アニメフェアへの協力拒否という反発も無視して
採決を急ぐのだとしたら、
「子供への悪影響を憂慮する」という理由以外のものがあると考えざるを得ません。


東京都の本当の理由は、業界の自主規制を無視して販売規制をかけること。
他には理由が思い当たりません。
子供への悪影響を憂慮する陳情がたくさんあったわけでもないのですから(*1)。


業界の自主規制を無視して、行政が販売規制をかける。
これはもう検閲です。
実際、検閲まがいのこともすでに取りざたされています。

漫画規制、パンフ作成へ
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20101210-OYT8T00397.htm?from=os4

 子どものキャラクターによる露骨な性行為を描いた漫画やアニメの販売・レンタルを規制する東京都青少年健全育成条例の改正案を巡る質疑が9日、都議会総務委員会で行われ、都は、成年コーナーへの区分陳列に加わる漫画の内容などを具体的に示す解説書や一般向けのパンフレットを作成する方針を明らかにした。

 同委員会で、民主党議員が「創作活動の萎縮につながるという懸念を抱く出版関係者が多い。どう不安を払拭するのか」との質問に対し、都は「条例案はこれまで通り、18歳以上への販売を規制するものではない。(区分陳列に加わる)範囲について懸念を抱く人もおり、改正案の趣旨に理解を得られるようにしたい」などと述べた。条例案が今回の議会で可決された場合、今年度中に解説書などを作成するという。


いずれにしろ、この問題は条例が可決しようが継続審議になろうが続いていきます。
たとえ可決したとしても、条例を正しい方向に直すように働きかけなければなりませんから。 


(*1)
国会の質問王 保坂展人衆院議員が現場を歩く 第11弾
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20101208-02/3.htm

「この条例案には、なぜこれが必要なのかという『立法事実』もない。私が委員会で質問したところ、過激な性表現の漫画について都に寄せられた苦情は月平均でたったの2・5件だというのです。被害実態もないのに、なぜこのような条例案を出してくるのかまったくわかりません」(松下都議)