生物多様性で生態系はほんとうに安定するのか?

このブログで生物多様性の話題を採り上げていたところ、
知り合いから「生物多様性が高まると、生態系は不安定になるよね」という
指摘を受けました。


えっ、そんなはずは、と思ったんですが、
その人からいろいろ参考資料をもらいました。


May, R. M., (1972).
Will a Large Complex System be Stable?
http://www.nature.com/nature/journal/v238/n5364/abs/238413a0.html
Nature 238, 413 - 414
ロバート・メイ「巨大な複雑系システムは安定するのか?」


せっかくもらったんですが、悲しいことに英文論文を読むなんて無理でした。
で、日本語の解説ももらいました。


「多様性のダイナミクス
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~tokita/2001YITP_Papers/Tokita.pdf


残念ながら、Σだの行列だの数学のオンパレードで、
二次方程式でも怪しい私にはお手上げ。
もう少し簡単な説明はないのかと調べたところ、やっと見つかりました。


生物多様性と安定性」
http://cse.niaes.affrc.go.jp/yamamura/topic11.html

生物多様性と安定性の関係についての論争は1950年代にさかのぼる。チャールズ・エルトン (1958) は生物多様性と安定性の関係についていくつかの「証拠」なるものを示した。それは例えば(1)昆虫個体群の大発生は北極圏で頻繁に発生するが,種数の多い熱帯地方では滅多に発生しない。そして(2)昆虫の大発生は人間の手によって単純化された群集である農耕地で頻繁に発生しやすい,というものであった。しかし,このような多様性−安定性仮説はロバート・メイ(1972) の数理モデルによって誤りであることが証明された。彼は多種系のロトカ・ボルテラ競争モデルを用いることによって,生物多様性は逆に安定性を低下させることを示したのである。生物多様性が安定性を導くという考え方に関しては,このように現在では理論的な根拠は存在しない。


なかなか衝撃的な内容ですね。
生き物や生態系というのは、わたしたち人間が簡単にその営みを想像できるようなものではないようです。



ちなみに、先ほどの論文「生物多様性と安定性」で、人口の増加について述べている部分がありました。

あらゆる数理生物学のテキストの最初に出てくるモデルは 、指数成長のモデルである。バクテリアなどは、生活資源が枯渇するまでこの式に従って個体数が爆発的に増大する。Mark Newman 氏のホームページ [2] にも地球人口について同様のグラフが示されており、一見すると 「なるほど 、人類もこれまでは指数関数的に増殖してきたのか」と思ってしまうが 、実は、指数関 数よりもさらに速い曲線に当てはまると書いてあり驚かされる (2020 年に人類の個体
数は「発散」するようだ!)。早晩曲線が飽和することは間違いないが、とにかく個体数動態の観点 からも人類は極めて特殊な存在である。


人口のグラフは一体どんな曲線なんだろう、と探したところ、国連?の資料があったので貼っておきます。




……なんですか、これ。
始点がこれで正しいのか、という批判もあると思うのですが、
人類が急激にふえていることは間違いないですね。
(このグラフ、国連人口基金東京事務所のサイトにあったんですが、今日見たらサイトから消えていました)